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遥拝【ようはい】のすすめ

「遥拝」ということばをご存じですか?

遥拝とは遠く離れた所から神仏などをはるかに拝むことです。今年は新型 コロナウイルスにより行動が制限され自由に出歩くことができない日々が続きました。
日本は古くから天然痘 (疱瘡(ほうそう))やコレラ・麻疹(はしか)といったウイルス性伝染病との戦いが何度となく続いていますが、緊急事態宣言下にテレビで再放送された有名なドラマのJIN「(じん)」では、現代の医者で仁という人物が江戸時代にタイムスリップしてコレラをはじめいろいろな病気を治療していくというドラマがありましたが、舞台となった江戸末期では、何度もコレラに見舞われ、一八五八年の流行では江戸の町だけで三万人以上の方が亡くなられたと記録されています。その後も何度も疫病は流行を重ね一八六二年には、コレラと麻疹が重なって流行し、数か月で二万人以上が亡くなるなど甚大な被害を与えていました。江戸ではその当時、実際には仁先生はいませんから人々は信仰やまじないにすがったそうです。麻疹除けとして、災厄を食べつくすという馬頭観音のご利益からか、浅草寺境内の神馬(じんめ)所の白馬の葉桶を被るまじないが流行りました。天然痘にまつわるものは多く、源頼朝の叔父にあたる源平時代の最強の武士とうたわれる源為朝(みなもとのためとも)が疱瘡神を撃退したという伝説から天然痘除けの神として信仰されたとか、現在SNS上で注目されている妖怪アマビエの絵を飾ると良いなどありますが、横浜市にある長昌寺(ちょうしょうじ)には、天然痘を「イモ」とも呼ばれたことから芋観世音が祀られ、芋観音にお参りをして祈願し、池の湧水を頂けばその難を免れ、たとえ天然痘にかかっても軽く治るとされ「疱瘡除けの観音様」として近隣諸国から天然痘の為に顔に残ったケロイド状の傷跡で悩む人々で賑わったとのこと。
また、平安時代より始まったとされる疫病除けの祭りである祇園祭の「ちまき」には、「蘇民将来子孫也」という護符が貼られていますが、これはスサノオノミコトが貧乏でありながら精一杯もてなした蘇民将来(そみんしょうらい)に、礼として「将来、疫病が流行ってもあなたの子孫は末代まで護ろう」と言い「茅の輪」を渡した故事にちなんでいます。そもそも祇園祭は疫病除けの祭りですが今回のコロナ禍によって鉾の巡行が中止されました。本末転倒だというご意見もありますが、明治時代では何度もコレラで中止となった例もあります。

今回のコロナ禍の中で思うように外出できない中、コロナ除けや様々な願いを神仏に祈りたいという時に良い方法があります。それが遥拝です。

寺社に直接参拝せずとも、気持ちさえあれば、寺社のある方向を向いて静かに祈りをささげるという方法です。これは家に限ったことではなく、各地にも遥拝所という場所があります。多くは神社を中心に伊勢神宮を遥拝する場所がありますが、比叡山延暦寺にも「万拝堂(まんはいどう)」があります。世界中の神仏を迎えて奉安して、日夜平和と人類の平安を祈願している遥拝所です。根本中堂大坂を登ったところにあり、隣接する一隅会館は、参拝者のための無料休憩所になっていますので是非機会があればお参りください。

遥拝はどこでもできます。家の中の仏壇や神棚、御札に向かったり、たとえ家でなくても信仰する仏様のいらっしゃるお寺の方向に向かって静かに手を合わせるだけでもかまいません。また極楽におられるご先祖様にすがるのも良いでしょう。信じる心が強いほどその思いは通じるものです。         合掌

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